活動報告(2024-07-13)
講演・勉強会「鳥海山麓の持続的発展を目指して ~小水力発電、鳥海ダム、そして百宅地域」(合同会社ハイドロパワー 金内剛)を開催
2024年7月13日(土)
鳥海山麓はまだまだポテンシャルを秘めている。
日本の山村を活性化するキーになり得る小水力発電。元祖 自然エネルギーともいうべき水力発電は、シンプルな設備構造で稼働期間が長いというメリットがあります。
民間企業が新規の発電所を建設し運営することは、様々な可能性を示す素晴らしい取り組みです。
この発電所を運営する合同会社ハイドロパワー代表の金内剛さんに小水力発電、鳥海ダムと百宅地域、そして鳥海山麓のこれからについてお話しいただきました。
山形県酒田市在住の金内さんは、元国土交通省 技官であり、鳥海ダム調査事務所の2代目所長として鳥海ダム建設に携わってきました。その中で、鳥海山麓にある小水力発電のポテンシャルに着目することになります。
【鳥海ダムについて】
鳥海ダムは2032年の完成を目指し、百宅地域を中心に工事が続いています。着工から完成まで40年を要する巨大インフラ事業です。川の流れや道路はもとより、山を切り崩し地形まで変える大工事の紆余曲折を、当事者ならではのトピックを交えながらお話しいただきました。
候補地の変遷や、住民の理解、具体的な工法、そして完成後の地域のビジョンなど、興味深い話が続きます。
【百宅地域について】
続いて、鳥海ダムの湖底に沈むことになる百宅地域の、その歴史的位置づけについての考察へ。
西暦717年、今から1300年前の「百宅」開基の歴史的背景を文献や周辺地域の史実から探ります。大和朝廷の出羽国建国と出羽柵の設置、酒田→雄勝への勢力拡大とその中間地点である百宅、そして百宅という地名の由来などなど。歴史や伝説が多い百宅については、掘れば掘るほど興味深い話が出てきそうです。
【鳥海貝沢水力発電所について】
そして最後に金内さんが鳥海山麓にそのポテンシャルを見出し、実現させた小水力発電所について。
昨年10月に運転を開始した「鳥海貝沢発電所」は合同会社ハイドロパワー(酒田市)が運営する民間の小水力発電所です。鳥海高原の恵まれた水資源を活用して約50kWを発電し、電力会社に売電しています。
長く鳥海ダムに携わってきたとは言え、構想から実現には相当なご苦労があったはず。設計や許認可の申請、用地や水路使用の交渉などは全て自身で行い、施工は地元の業者に依頼と、極限までコストを抑え、同規模施設の数分の一の費用で完成させたそうです。
稼働開始からそれぞれの季節を経て、様々な改善を加えながら順調に稼働しているとのこと。「適地があればぜひ次も」と意欲は尽きません。
自然エネルギーと一口に言っても、その有効性・有益性は様々です。小水力発電は、人々の豊な暮らしを支えるエネルギーについて、より身近な問題として考える機会を与えてくれます。巨大な発電施設ではなかなか見えない「電気はどこから来て、どこに行くのか」、そして「自然から何を得て、何を返しているのか」…、そういったことを改めて考えさせられます。
それは災害対策が主な名目のダム工事や、これから本格化する洋上風力発電事業でも同じこと。
そこから何を得て、何を失うのか。次の世代に何を残していくのか。そして自然とどのように対峙していくのか。
地域のこれからのこと、自分事として考えて、議論し、知ることが大切だと感じました。